フォーリーブス、たのきん、少年隊、光GENJI・・・ジャニー喜多川の最高傑作を決めよう(前編)【宝泉薫】
少年を犬にたとえるなら、ジャニーは血統書がつくような犬より、野良犬や捨て犬のタイプが好きだったように感じる。フォーリーブスのあとには、生年月日すら不明な捨て子で、児童養護施設出身の豊川誕をデビューさせたりもした。北の場合、やんちゃぶりが若い頃から度を越していた感もあり、それが後年の古巣への裏切り的言動(のちに和解して、感謝も表明)にもつながるわけだが、こうした光と影が際立つようなメンバーがいたことも、フォーリーブスの人気を支えていたはずだ。
もちろん、ファンの目に映るのはもっぱら「光」の部分。当時小学生だった筆者の女友達にも、彼らに憧れる子がいて、あるときこんなことを口にした。
「男の子は顔がよくて、運動ができなきゃ、モテないよね」
今もこの言葉を覚えているのは、女子の本音をここで思い知らされたからだ。おそらく、ジャニーズ系は長年、運動神経のいい美少年を輩出することで、世の男子のコンプレックスを刺激してきたのではないか。今回の騒動で、現役のアイドルたちへの風当たりまでやたらと強烈なのは、60年以上もジャニーズ系がモテ続けてきたことへの反発が根っこにあるのだろう。
なお、フォーリーブスの弟分的なかたちでデビューし、フォーリーブスよりも先にジャニーズを去ったのが郷ひろみ。その若い頃から今にいたるまでの輝きは圧倒的だが、最高傑作と呼ぶことはできない。高1でジャニーズ入りしたものの、19歳でバーニングプロダクションに移籍。彼の魅力には、バーニングによって開花したところも大きいからだ。
さらに、彼の移籍はジャニーズに冬の時代をもたらすことに。井上純一や川崎麻世、ジャニーズジュニアスペシャルなど、いろいろと繰り出したが大きくは当たらず、ニューミュージックブームもあいまって、地味な状況が続いた。
しかし、79年秋に転機が訪れる。学園ドラマ「3年B組金八先生」(TBS系)に田原俊彦、近藤真彦、野村義男が出演、たのきんトリオとして圧倒的な人気を獲得したのだ。
このドラマシリーズでジュニアが顔を売るパターンは20年以上も続いた。現役朝ドラ女優・趣里のデビュー作でもある2011年の「ファイナル」でメイン生徒に起用されたのは、岡本圭人。男闘呼組の岡本健一を父に持つ、二世ジャニーズでもある。
それはさておき、たのきんによる巻き返しから約10年が、ジャニーズ帝国第1期の黄金時代だ。傑作ぞろいでもあり、そこでの「最高」を選ぶのはなかなか難しい。
歌唱力を揶揄されながら、事務所伝統のダンス要素を極めていき、退所後も華のある生き方をしている田原にはアイドルオブアイドル的なものを感じるし、近藤はつい最近まで「ジャニーズの長男」などと呼ばれていた。ただ、ジャニー好みのバタくさい芸能をもっぱら表現していた田原に比べ、石原裕次郎映画のリメイクなどもやった近藤には、ジャニーズ系の王道っぽさがやや不足している。郷ひろみの穴を埋めたという意味でも、田原をより高く評価したいところだ。
では、シブがき隊と少年隊ではどうか。前者は遊び心たっぷりのハチャメチャ感、後者はダンスグループとしての本格感が魅力であり、異種格闘技みたいな比較にならざるを得ない。アイドルとしてはシブがき隊のプロ的な計算を超えるような輝きに軍配を上げたいが、ジャニーが最も重視したミュージカルへの取組ぶりでいえば、少年隊はレジェンドだ。
とはいえ、この2グループもかすむほど突き抜けた存在が87年、突如として出現する。奇跡の7人組・光GENJIである。